仕事とは何か、夢とは何か?『下町ロケット』レビュー
久しぶりに、日本人作家の小説をひとつ。
知り合いがドラマを推していたのですが、活字中毒野郎はまず小説から入ってしまうのでした。
いやー
おもしろかった!!!
かつ、勉強になった。
結構一気読みしちゃいました。
電車の中で不覚にもうるうるきてしまったよ……
製造業に関わる人はもちろんですが、世の働き人に推奨しますねこれ。
仕事って何なのか、
生きるって何なのか、
お金って、プライドって……色々なことを考えさせられました。
主人公は、小さな町工場「佃製作所」の社長、佃航平。佃は元研究員で、ロケットを飛ばす夢を捨てきれずにいた。
ある時大手取引先、京浜マシナリーとの取引中止が宣告され、資金繰りに難航。
投資会社や銀行を練り歩き、なんとか耐えようとする。
そこに、競合他社であるナカシマ工業から、特許侵害の訴えが! …というのがアタマのあらすじです。
製造業にかかわる方なんかだと「おおっ他人事とは思えんきになる」となりそうですが、あまり普段関わりないと、そこまでキャッチーにはうつらなかった…りするのかな?
専門知識が必要ということもないので、ぜひ多くの方に読んでほしいなぁと思いました。
日本のものづくりの心意気とか、根源とか感じるし、自分は元気が出たよ!
さてさて、以下、ネタバレ防止で折りたたみます。
個人的に素敵と思ったポイントは下記3点。それぞれ綴っていきます。
1. 人間ひとりひとりの秀逸な描写
2. リアリティのある製造業の姿
3. テンポの良いストーリー展開
1.人間ひとりひとりの秀逸な描写
文庫本にして1冊の厚みながら、結構色々な人が出てきます。
しかし、ひとりひとり、キャラが立っている。
なぜなのかと思うと、それぞれが個人の考えを持っていて、いち組織の中でも様々な考え方があって。
文庫の解説にもありましたが、「悪者」がいない。
それぞれが考えをもって行動している。
この中でも、仕事にアツイキャラクターには心打たれました。
佃製作所の中心メンバは、非常にものづくりに熱く。
でも、帝国重工のメンバにも財前をはじめ、そんな人がいて。
仕事に全身全霊をかけて立ち向かう姿がすごくかっこよかった。
すごくリアルならツライだろうなという場面もあったし、プレッシャーがすごいところもあって。
仕事ってやっぱ大変だなぁと思う反面、
仕事に本気になるだけ、大変にもなるけど、その達成したときの感動や、エネルギーというか、そういうものが比例して増加していくんだなぁとひしひしと感じました。
生きる!!!って感じ?
仕事ばかりにはなりたくないけれど、
こうして夢のために、何かのために、歯をくいしばりながら闘う姿は泥臭くてかっこいい。そう心から思いました。
2. リアリティのある製造業の姿
自分の普段の仕事では、製造業の方を相手にするこも多いのです。
ただ、自分は製造業ではない。
そんな自分にとっては、フィクションとはいえ、製造業の日々の姿をのぞける良い機会になりました。
しかも、随所で出てくる話題が非常にリアリティがある。(実際に仕事上で耳に挟む話とも類似していたりして)
特許の穴とか。
経常利益が連続してどうなるかとか。
使用許諾のやり取りとか。
資金繰りの方法とか。
日々読む新聞の見方も若干変わってくるような気さえします。
それだけ、リアリティがありました。
だからこそ、物語にも入りこんでしまいますね。
3. テンポの良いストーリー展開
1冊の文庫にしては、作中かなり様々なトラブルが発生します。
ただ、それをやたらに引っ張ることはせず。さくっと短いページで解決しつつも、すぐに危機がやってくる。
はらはらして、どうにも読んでしまう。
正直、読んでて「中だるみ」する部分はなかったです。
これ結構難しいように思います。
展開の中に危機をがんがん盛り込むだけならできるでしょうが、
自然かつクリティカルな危機、さらにそれが整合を保って展開していくとなると!
これは、池井戸先生の筆力に脱帽です。
全く違和感なく、ラストまでどんどん読んでしまいました。
とまぁこんな感じで。
先ほど帰りの電車で読み終わったばかりで、
冒頭にも書いたように、仕事とは何か、夢とは何かって、もやもや考えてしまいます笑
でも、なんだか元気が出て、仕事がんばろーって気になってきた。
良い作品でした!
近いうち、続編の「ガウディ計画」も読んでみようと思います!