トモロコシ畑

油絵を使って動物を描いています。創作活動のご報告、日常の雑記など。

想像力の銀河のような短編集『日本SF傑作選折り紙衛星の伝説』レビュー

ご無沙汰でした。仕事が激務だったり、先週は海を求めて石垣島に旅立ったり、ごたごたしておりましたが、そんな中心の平静とロマンを求めて地道に読んでいた本、読了しましたので久しぶりにレビューします。

東京創元社の毎年恒例、SF傑作選です。 

 

実はこの傑作選、SFに魅了された去年から読み始めているのですが、去年読んで非常におもしろいと感じまして。今年も思わず買ってしまいました!今年もやっぱり期待を裏切らない素晴らしさで、来年以降も購入確定です。

 

私はSF初心者なもので、どんな作家がどんな文体で、どんな世界観で書くのか全く知識がなく。

巻末やネットのあらすじを通して、世界観は若干把握できるものの、文体や、世界観を描き出す方法というのは実際読まないとわかりませんし、そこが小説のキモと思っておりまして。

そこに1冊で多くに触れられるというのは非常に魅力的でした。

 

18編もありますので、今回は中でも印象に残ったものを語ろうかなと。

あまり細部まで分け入って語るわけでもないですが、一応ネタバレ防止で折りたたみます。

 

 

■下永聖高『猿が出る』

猿が常に視界にいる青年の話。

自分の視界に、自分だけが見える猿が出てくる。というなんとも不気味なツカミなんですが、猿との距離感がなんかこうイイ感じで。

最後の返しもいいんですが、個人的には猿とのその距離感の描きだし方がいいなと思いました。

 

星野之宣『雷鳴』

恐竜時代にタイムスリップした調査団の話。漫画。

 

さすがSFの巨匠で、雰囲気とかエフェクトの描写がすごい。

でも何より尊敬の念を抱くのは、単に現象として描くのではなく、その現象の発生原因を科学的に語っている点。漫画は絵で示せるがゆえに、その論理的な部分の確立が甘くなってしまうことがあると思うのですが、全くそんなことはなく。

論理的に理由を説明した上で話を発展させている点は、改めて学ぶべき点として自分の心にも刻んでおくと。

 

円城塔『Φ』

メタ的な作品。

読んで意味がわかると、ああそういうことだったのかーともう一度読み返したくなりました。これ書くの大変だよな。。。

最後に意味がわかった上で、色々思いをはせると、小説世界の拡がりにより一層感じ入りました。

 

■田丸雅智『ホーム列車』

ホームでの小話。

世界観と描き方で、星新一を思い出しました!ホーム可愛いな。

『雷鳴』のレビューと反するようですが。童話のような世界で、そこは科学的に説明がなくとも気にならず、すんなりのみこめて味わえました。

……おや。この違いはなんなのだろう?

 

■伴名練『一蓮托生(R・×・ラ×ァ×ィ)』

 

神話か、寓話か。不条理で軽快な、双子の話。

ありえないことが次々起こるのですが。語り方ゆえなのか、神話のように思えたので、そのありえないこと含めひとつの世界とみなせて、 興味深く読みました。

SF作家・R・A・ラファティのアンソロの一遍ということですが、ラファティを読んでいない自分はこの作品単独でしか読んでおらず。でも、それでも独特な世界の拡がりにはおもしろさを感じました。

 

三崎亜記『緊急自爆装置』

市役所に自爆装置が導入されたら、という話。

イデアはもちろん、予算がどうのとか、お役所仕事がリアルにからめられていてリアリティを感じました。仕事の経験がこういうところに生きてくるんだな。(と、自分にも言い聞かせてみたり。自分はお役所じゃないけど!)

いつでも自爆できる……って、もしほんとにあったら、需要ないとはいいきれないと思ってしまうことに現代社会の切なさをみました。

 

諸星大二郎『加奈の失踪』

ひと仕掛けある、夏の日の話。漫画。

最初は何がなんやらという感じでしたが、読み終わって驚きました。お見事としかいいようがない。。。

たまにあるカタコトっぽい言葉も、逆に味があっておもしろかったです。

 

■遠藤慎一『「恐怖の谷」から「恍惚の峰」へ~その政策的応用』

論文形式の作品。

それらしくて本当に論文を読んでいる感じがしました。納得感もあるし。

最初一見したときは正直、読みにくそうと思ったのですが、読み始めると無駄な部分もなく、論理的でわかりやすいので一気に読めました。うーん、書き方として、アリですね!

結局SFって現代の最先端研究と通じる点がありますし。それを鑑みても、論文という形式はSFにマッチするのかもしれません。

 

■西島伝法『環刑錮』

罪人が、単細胞生物に変化させられるという刑に処せられる話。

言葉が巧みで、複雑な漢字をたくさん練り込んだ描写が多く、結構読みにくかったんですが、単細胞生物として生きる恐怖感とか、絶望感がその描写方法から感覚的に伝わってきました。

話のすじが追いにくい。でも、独特の世界があって、不思議な魅力がありました。

しっかし、こんな刑罰あったら絶対犯罪したくないな(汗)

 

 

 

ピックアップしたつもりだったんですが、結構多かったですね(^^;

他の作品も勿論素晴らしかったのですが、上記あげたものはかいている通り、自分に影響があったり、新しい試みとしておもしろいと感じたものでございます。

 

やっぱSFって、自由で制限がなくて、おもしろい!

SFはまたじわじわ読んでいくのでレビューかきます。

 

うん、改めてSF作品創作の熱意がわいてきましたっ!

ということで、Comitiaの原稿やります……。(^^;