トモロコシ畑

油絵を使って動物を描いています。創作活動のご報告、日常の雑記など。

短編小説レビュー・朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』、朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』

 またもや少し間が空いてしまいました。

 こんにちは、トモロです。

 GW明けから仕事に復帰し、これまでと全く違う仕事をこなしていたのですが、もう頭からバタバタでして。長期休暇でなまったワタクシは、疲弊…もう社会に適用できない体になってしもうた! …と思ってたら、ぼちぼち復帰後1ヶ月と言うところで、やっと慣れてきた。うーん、良いのか悪いのか。早く帰れるようにがんばろー…。

 

 ペルー旅行記も一部残はあるので、ちまちま書いておりますが、今回は久しぶりに2冊の本のレビューでも。

 忙しいと、細切れでも読める短編小説が心のオアシスになって参ります。と言うことで、最近読んで面白かった小説たちをご紹介。ご興味があればぜひ読んでみてください。

 

 

朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』 

世にも奇妙な君物語 (講談社文庫)

世にも奇妙な君物語 (講談社文庫)

 

  短編5話収録。1編あたり50頁程度で、サクサク読みやすい。

 タイトルを見てお気づきかと思いますが、『世にも奇妙な物語』の朝井リョウアレンジ、がテーマとなっています。内容はまさに世にも奇妙な〜と同じような、ちょっと不気味で不思議なお話ばかり。日常で「ありそう」な場面から、「いそう」な登場人物が登場するんですが、なんだか引っかかる仕掛けがあるのです。

 

 例えば、第一話。雑誌編集者の主人公・浩子は、ある夜一人で居酒屋で飲んでいて。酔いつぶれた挙句、同じ居酒屋にいた女性に介抱されます。朝起きたら女性の家。どうもシェアハウスらしい。浩子がやっと勝ち取った特集ページはまさに「シェアハウス」! これはいい、と、なんとかしてシェアハウスの面子と会話し、後日話を聞きに行けることに。しかし、なぜか女性はあの夜「居酒屋にいた」ことを隠したがっていて…? という話。この隠し事、一体どう転ぶのでしょう? しっかりオチも、あります。

 朝井リョウ氏といえば、『桐島、部活やめるってよ』に始まり、『何者』など、若者の心境を抉り出すような作品を想定しがちですが、いやはやこんな作品まで書けるとは。氏の幅の広さを感じました。

 とても面白く、一気読み。5編も、それぞれ関係性があり、1冊でしっかりまとまった良作になっています。特に世にも奇妙な〜好きには勧めたい。

 

朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

 

  短編5話収録。短編、と言いつつ、これまたトータルで1冊の作品となっています。同じ主人公、同じ職場を舞台にしつつ、1話毎に違う人物にフォーカスが当たります。

 

 主人公の東山結衣は、Web制作会社に勤務して10年目。近年はずっと、定時で帰ることを厳守し、キビキビ仕事をしている。

 しかし、そんな彼女を取り巻く社内の面々…どんなことがあっても皆勤を目指す人、出産してすぐ復帰しバリバリ働くワーキングママ、かつての結衣の恋人だった仕事の鬼、顧客の言う事を聞きっぱなしの上司、砂糖中毒だが頭脳明晰な役員、そして、結衣と結婚間近・おぼっちゃまのフィアンセ…。正直、だいぶ極端なキャラクターも多いので、フィクション感はあるのですが。どこか、一笑できない、リアリティのあるキャラクターたち。そんな彼らに、結衣は振り回されます。

 結衣は定時で帰り続けることができるのか?

 結婚はうまく行くのか?

 

 軽快に進む物語は読みやすく、「ああ、こう言うことあるよね〜」とうなづきながら、サクッと読めてしまいます。

 同期に勧められて読んでみましたが、うーん、なんとも働いている人にはリアルな内容。特に、IT系の人たちは身近に感じるのではないでしょうか。最初はちょっとやりすぎなキャラじゃない? と思いましたが、各キャラクターの掘り下げが丁寧になされていて、ライトながらもグッとくる、良作でした。

  今は吉高由里子主演でドラマもやってますね〜。ドラマだとどんなんなんだろ〜。ちょっと気になります。