トモロコシ畑

油絵を使って動物を描いています。創作活動のご報告、日常の雑記など。

『不染鉄展』『川端龍子展』『吉田博展』感想メモ:日本人の美意識を感じる世界

大学時代、週1回行っていた美術館……。最近は少々おざなりになっておりました。

だがしかし!日本画を始めたこと、都心に住み始めたことも手伝ってか、最近はかつてのような勢いで行っております!

 

ということで、現在開催中の展示会たちの感想を書いてみます。今回は日本人作家の展示群ということで、下記3点の展示について。

 

 

混雑度なんかもご参考に書いてみますので、ご興味持たれた方はぜひぜひ足を運んでみてください^^

 

不染鉄展

1891年に生まれ、長年絵筆をとりながらも、途中画壇を離れ、独り制作を続けてきた作家。それゆえ、回顧展は21年前以来の開催となります。

 

日本画の作家でありながら、図面構成が非常に合理的・デザイン的で。自然から題材をとりながらも、個々の作品で独自の世界を創り、完結させているという印象です。

一時期伊豆に住んでいらっしゃっていて、伊豆の海や風景をよく描かれているのですが、「海」というよりは、海からエッセンスを抽出して描きつけられた「不染鉄の海」となっている。

3次元ではありえない構成もあったりするのですが、不思議と調和していて。ある種モダンな日本画とでもいえるような、不思議で独特の世界があります。

線画がきっちりしているから、少しイラストにも似ているかも。

 

不染鉄。染まらない、鉄。まさに、その名の通りの頑固な美意識が感じられます。

 

展示は5章構成になっているのですが、当時のスケッチや、手がけた工芸品もあり、非常に見応えがあります。日本画好きの方は是非。

 

 

展示名 :没後40年 幻の画家 不染鉄展

開催場所:東京ステーションギャラリー(東京駅ナカ

会期  :2017年7月1日(土)-8月27日(日)

ジャンル:日本画

公式HP  :東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -

 

 

混雑度   :★☆☆ゆったり見れます(会期初期の土日朝イチに行きました)

ボリューム:★★★会場も広く、見応えアリ

こんな人へオススメ:日本画好き、デザイン好き

 

 

川端龍子

1885年に生まれ、20代は挿絵画家として活躍。その後、画壇に登場するも、大衆に迎合する「大衆芸術」と非難され、脱退。その後会を主宰し、描き続けた作家の展示です。

 

個人的に非常に感動したのは……迷いのない筆遣いと、美しい色。

筆遣いが本当にもうなんだ…すごいんですよ。迷ったら絶対に筆致に見えてしまうだろう場面でも、全くそれがない。巨大な作品にあって、絶対に失敗できないような局面にありつつも、迷いがない。そして、筆致で自然が鮮明に描写されているんです。草の構造、葉の厚みが、その一筆一筆の重なり合いで描き出され、しかもそれが「わかる」。

半端ないです……。

 

特に、HPなんかにも出ている『草の実』という作品。これ、ほんとすごい。是非会場にて間近でみていただきたい。

黒い背景と、草のコントラストもそうですが、筆遣いが本当にため息がでるほどすごいです。

しかも、これ作家の家の近くの雑草を描いた、というから驚き。

でかいすごい題材を探さずとも、身近でモチーフをみつけ、しかもここまでの大作に描き上げる、感性と観点が素敵です。

 

展示名 :没後50年記念 川端龍子 ー超ド級日本画

開催場所:山種美術館(恵比寿駅徒歩10分)

会期  :2017年6月24日(土)8月20日(日) 

ジャンル:日本画

公式HP  :【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画― - 山種美術館

 

混雑度   :★☆☆ゆったり見れます

ボリューム:★☆☆個人的にはもう少しほしかったかなぁ

こんな人へオススメ:日本画好き

 

 

吉田博展

1876年に生まれ、風景画の第一人者として活躍した吉田博の展覧会。風景画を多くのこしていますが、後年は実際に登山に取組み、登山家としての活動をしつつ、そこで観た風景を作品として残しています。

木版画の作家とみなされていますが、水彩、油彩も描いていて、今回の展覧会でも展示されています。

 

とにかくこの作家は、モノのカタチをつかむのがとてつもなくウマイ。しかも、描き始めて早々にその力を発揮しています。(小学4年生のころのデッサンが展示されていましたが…えっ小4?という次元)

 

鉛筆で明確にツカむがゆえに、線画だけでも非常に緻密で。

デッサンや水彩は少々アニメの風景画のごとき繊細さです。

 

後年の木版画も好きだし素晴らしいんですが、初期の、特に水彩画が個人的にはかなり好きです。自然をつぶさに観察した跡が見えて、豊かな自然のとらえ方が垣間見えます。渓流ひとつ描くにしても、岩のひとひひとつ、色を変え、明確に描きだしていて。大変美しいです。

 

木版画は、木版画なのこれ…って絶句するほどの美しさ。

色の出し方が非常に巧妙です。

1作品毎に表現したいものが明確で、それに沿った版の重ね方をしていて、見ていて非常に明快で、すっきり。それでいて、色の重なり合いにうっとり。そんな作品がたくさん展示されています。

特に、登山家としての活動による雲海や滝のモチーフ、海外周遊による異国の景色は幅広い題材を作家に提供しており、観ていて飽きません!!!

技術が非常に高いため、安心して観れます。

美術が好きな人万人にオススメできる展覧会です、ぜひ。

 

展示名 :生誕140年 吉田博展 山と水の風景

開催場所:損保ジャパン日本興亜美術館(新宿駅徒歩5分)

会期  :2017年7月8日(土)8月27日(日) 

ジャンル:水彩、油彩、木版画

公式HP  :吉田博展 | 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

 

混雑度   :★★☆入場待ちではないがかなり混んでいます

ボリューム:★★★お腹いっぱいっす…

こんな人へオススメ:絵が好き、水彩好き、木版画好き、風景画好き

 

 

 

以上!

ご参考になれば幸いです。

やはり、展示にいくと創作意欲も刺激されますね!日本画がんばるぞーーー!

 

あとは、全然別ジャンルで『しんかい展』もいったんですが…あまりに違うので別途書きます笑