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智の素

ITコンサル兼絵描きの雑記。日記、世の中考察、本のレビュー、作品掲載など。

裏切り裏切られ、悪女が搔き回す人間模様。『悪女は自殺しない』レビュー

レビュー

久しぶりに翻訳ミステリのレビュー。

今回は、『深い疵』、『白雪姫には死んでもらう』の、オリヴァー&ピアの警察コンビものシリーズ第一弾。
自分は両作品読んでますが、どちらもオリヴァー&ピアのキャラや、推理困難な事件模様が好きで、今回のレビュー作品でもそこ特徴が大いに出ておりました。
 
ただし、さすがに処女作、若干の読みにくさはあります。
それでも読者を巻き込んでいくエネルギーはさすがというほかありません。

 

悪女は自殺しない (創元推理文庫)

悪女は自殺しない (創元推理文庫)

 

 

 

ではいつものようにネタバレ防止のため折りたたみます。

 この作品の大きな魅力は、①複雑で先が読めない展開、②オリヴァーを中心とした、生々しい人間描写、この2点だと思います。

 

複雑で先が読めない展開

すべてのはじまりは、自殺っぽい女性の遺体が発見されたということ。その1点だけ。
勿論物語は、なぜ女性が死んだのか、他殺ならば犯人は誰なのか、という謎を明かすのが軸になるわけなんですが。
捜査線上に浮かぶ様々な人物。欲にまみれた人々の、事件として顕在化していない誘拐、資金洗浄、DV、詐欺。。。
それぞれの思惑と犯罪が絡み合い、物語が進むにつれどんどん複雑になっていきます。
 
展開が広がりすぎて、一気に読まないと追いきれなくなってしまう恐れもあるのですが、ページ数に比して非常に濃密な内容です。
 

オリヴァーを中心とした、生々しい人間描写

前項で述べたように、女性の遺体の事件含め、作中に出てくる事件は人間の欲に紐づいて出てきます。勿論、事件は人間が引き起こすもので、人間の欲や感情が絡むのは当然なのですが、小説で、複数の登場人物で、多くの事件を起こして、となると、整合性を保ちながらある種非合理的な「人間」そのものを描く力量が必要になります。(ここが足りないと、リアリティがなくなって小説に入り込めなくなる)
 
若干強烈に過ぎるきらいはあるものの、その感情という点は、醜いもの含め非常に生々しく描かれており、さすがと思うほかありません。
  • 誠実に仕事に取組みながらも、一時的に誘惑に負けてしまった男。
  • 魅力的な女性に奪われた夫の心を取り戻すため、頑張って着飾る女。
  • 旦那のDVに耐える女性を陰ながら支えようとする男。
どのキャラクターも清廉潔白ではなく、人間らしさが溢れています。
 
 
人の感情と想いは行動と言葉にあらわれると思いますが、会話についても全く違和感を感じず読み進めることができたため、物語に没入できました。
この点は、翻訳者である酒寄氏の力量の賜物だと感じます。
 
 
 
先に翻訳版が出た『深い疵』『白雪姫には死んでもらう』をまだ読まれていない方でも読める内容だと思います。
ですが、個人的には、読み易さも構成もグレードアップしている両2作から読んで頂くことをお勧めします。
 

 

深い疵 (創元推理文庫)

深い疵 (創元推理文庫)

 

 

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)

 

 

 
今作は、上記2作を既に読んだ方もニヤリとする部分もございます。
オリヴァーの過去の話や、ピアのヘニングと離婚直後の様子等が分かりますよー!
 
 
今作、個人的にはトルディスが好きであります。。。ショート金髪でオリヴァーを軽くあしらっちゃうところがめっちゃかっこいい(笑)
 
久しぶりにがっつりミステリー、仕事の疲れを忘れて楽しめました!
オリヴァー&ピアのシリーズは未翻訳の巻もあるので、他の巻が上梓されることを楽しみにしております♪