血を撒き散らしながら、加速していく。『マルドゥック・ヴェロシティ』レビュー
久しぶりのレビュー記事。
昨年末に一気読みした、マルドゥック・シリーズ2作目、マルドゥック・ヴェロシティ全3巻のレビューを書きます。
マルドゥック・スクランブルが愛に向かう物語ならば、この物語はいうなれば。
血を撒き散らしながら加速していく物語、一言で述べるならそんな感じ。同じシリーズなのに雰囲気も展開も文体さえも全く違う、舞台設定と登場人物の一部を共有しているだけの繋がりとなっています。
さていつも通り、ネタバレ防止のために折りたたみます。
本作品の特徴としては、3つと感じています。
キーワードは、チーム・文体・ 展開。
それぞれについて書いてみます。
濃い濃い、チーム戦
マルドゥック・スクランブルはバロットとウフコックがメインで、どちらかというとソロが多かったですよね。
この作品は、チームで動きます。09という名の、クリストファーが主導する9名(+2匹)のチーム。これが皆いいキャラしている!
若干序盤は畳みかけで紹介があり、ちょっとわからなかったのですが、合間の掛け合いで人物像が浮かび上がってくると、癖があるが憎めないキャラばかりでとても良い。
チームワークで敵を倒したり、ちょっとしたくだらないやり取りが個人的にはたまらなく、好きでした!
それに対する殺人ピエロ、カトル・カール。
マルドゥック・スクランブル1巻の敵達も強烈なヴィジュアルとキャラをしていましたが、いやいやもうそれ以上におぞましいそれです。
しかも人数も13名、チームですよ! まぁこちらはソロでの戦いは多かったけども。(ていうか連携という概念はあんま持てないよねこれ。。。)
そんな濃い濃い2チームが戦うのもエキサイティングだし、
09チームのチームワークも胸熱、です!
自分は特に攻殻機動隊とか大好きなんで、興奮しっぱなしでした笑
この楽しさは、マルドゥック・スクランブルのほうでは味わえないものでした。
合理的かつ新しい文体
一読してすぐに気づくのが、スラッシュやイコールを多用した独特の文体。
記号的な表現として結構成り立っちゃってるんですが、人によっては気になってしまうかも。
自分は仕事でも論理的思考を主軸にする職種なもので、スラッシュやイコールは非常に合理的というか、事物と事物の関係性がはっきりするという点で表現としてもアリだな、と感じました。
もう1点、この文体がもたらす新しい読書体験があります。
スラッシュやイコールを多用することで、動詞が減るんですよね、即ち、単語そのものの羅列が増える。
そうすると、単語から想起されるイメージが先行する。これはなかなかに興味深いと思いました。
動詞や形容詞を入れると主観的になってしまいますが、単語が主体になることで実はより客観的に物語を「読む」ことができるんじゃないかと思いました。
落ちていく展開
えーと。端的に言うとこれ、進むほどに鬱くなります。。。
ばんばん死ぬし。愛着のあるキャラとか関係なく!
周囲の展開も始終落ち着かず、登場人物が多くて人間関係も複雑で。殺人の犯人探しもあり、ミステリー要素満載で物語を引っ張るのですが、それと並行して主人公ボイルドの心境と、仲間たちが変わっていく。
キャラにも愛着わいてしまったら、いつか死んでしまうん?ってもう読んでて辛いんですが、その行き先をみたいからという責任感、犯人を知りたいからという好奇心で読んでしまう。ああ、ひどいよ!(と叫びながら読む奴)
まぁ、前作読んでる方は、あのボイルドの過去って点で承知の上の鬱展開なんですが。
それをわかってもやっぱり鬱い。だがだからこそ、あのボイルドなのだね、と理解してしまう。
ああ、切ないが成立してしまっているねぇ。。。なので物語としてはすごいと思います、辛いけど。
ということで。
個人的には結構ヒットな作品でした!
スプラッターな表
現も若干あるのですが、そういうものが苦手じゃなかったり、チーム戦が好きな方、特殊文体も問題ないぜ、って方にはもう熱烈にお勧めする作品です!
展開はどんどん鬱くなっていくけどね。。。ああ。。。ボイルド。。。
マルドゥックシリーズは、短編集である「フラグメンツ」も購入済みですので、また別途レビューを書きます!
やっぱマルドゥック好きですわ!